彦道会~若宮隆志の軌跡を辿る〜

2025.06.15

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2025年6月6,7,8日の三日間に渡り、東京銀座に位置する知人平恵理子さんのギャラリー「emmy art +」にて亡き若宮隆志の面影を偲ぶ「彦道会」を彦十蒔絵道と若宮家と共に執り行いました。
本会では若宮が彦十蒔絵で遺した漆芸作品をはじめ、人生の年表、制作に込めた言葉や想い、ゆかりの品々を展示いたしました。

三日間、短い時間でしたが日本各地、海外から駆けつけてくださった沢山の方には心より感謝を申し上げます。若宮隆志は41年間の漆芸人生で漆に関わりのある方だけでなく、文化圏、学者、美術館、骨董業界、アート業界、刀剣保存会、異業種作家、茶道、神道、仏教、出版業界、政府関連、経済界などなど幅広くお付き合いがある上、どの方とも深い親交がありました事、ご来場の皆様と会話を交わした上で強く感じさせられました。

若宮隆志は輪島塗、輪島の漆芸を新たな表現方法や道を導き出した人だと皆さまが口を揃って話しました。早すぎるお別れでした、とても残念でした。
しかしながら、彦十蒔絵はこのままでは終わりません!
若宮隆志が作り上げた職人集団、チームとして精神性を継承しこれからも漆芸作品の制作と発表を続けさせていただきます。

彦道会で準備した品々について特別説明をさせていただきたいところが3つあります。

その1、
2021年からのコロナや2024年能登半島震災のことがあって、闘病生活をされていた時の若宮隆志と直接あって話せなかった方も多くいらっしゃると思いました。
また、若宮隆志との親交は当の本人ではないと分からない部分もあると考えましたので、
会場内で「心の供養」若宮隆志へのメッセージを送るコーナーを設けました。
後日お焚き上げを致します予定で、沢山のメッセージを寄せていただきとても感動しました。
その2、
変塗りと沈金技法で制作した「彦十」看板
彦十の文字は若宮隆志が大変お世話になっていた三笠宮家彬子女王殿下ご本人よりいただいた筆文字を沈金技法で表現したものでした。若宮隆志は亡くなる前の日に、”あの看板はどうするの?”っと気になって話してくれていたことがありました。もちろん、これからも工房に飾り続けます。
そして、彦道会へ彬子女王殿下がご来場頂いた時に記念写真をお願いして、ここで使わせて頂くことを了承いただきましたので写真を貼ります。誠にありがたく感謝を申し上げます。

その3、
謎の和装丁本「美甘物語」
病気を患っている人は笑うと癌細胞に勝てるとのことらしいので、彬子女王殿下は若宮隆志が亡くなるまでの2ヶ月半、毎日朝に共通のご友人美甘さんの可笑しい話を「一日一ミカモ」をLINEで送るというコンセプトで若宮へ送り続けました。タイトルは「今日のミカモ」!
そんな内容を漆チャンネルでお世話になった小学館のサッチーさん(齊藤)が和装丁をして、表紙にはセバスチャン高木さんの題字をいただき、世界に一冊しかない美甘物語となりました。
会場内では見せることができませんでしたが、これからは彦十蒔絵道の金沢工房に飾りますので、工房へ来られた方にはご要望がありましたら特別にお見せすることはできます。

そして、彦道会の様子を映像にしてくださったのは京都女子大学教授の前﨑信也先生が撮影、インタビュー取材、編集を友情協力してくださいました。いつも温かく寄り添いをありがとうございます。

若宮家代表の若宮樹さんにお父さんがどんな方だったか、ご来場の皆様から聞かせてもらった事も大変意味がある取り組みだと改めて感じました。
彦十蒔絵の継承は単なる技術の継承ではないと思います、若宮隆志が言わんとすることは自分たちの感覚で伝えていくことがとても大事だと思います。
最後に、彦道会へ足を運んでいただいた皆様には深く感謝を申し上げます。
これからの彦十蒔絵道も引き続きご支援、ご鞭撻をどうぞよろしくお願い申し上げます。

彦十蒔絵道代表 高 禎蓮(Wawa)